俺は、赤いスコープの中、十字の中央にそいつをはめこんでニヤリと笑った。
構えるは巨大な地対空ミサイル。
ホーミング機能もついている最新式のそれ。
ターゲットを中央に収めたままズームすると、奴の表情までばっちり確認できた。
スコープの中、奴は何が楽しいのかニヤニヤと笑っていた。
白い髭を生やした年配の男。
奴はまだ明日があると、日はまた昇るのだと信じている。
それを俺は打ち砕いてやる。
多少の罪悪感が無いでもない。
しかし、是が俺の仕事。
相手は、国境を無断で越える不届き者。
容赦は無用。
引き金にかけた指。
気付かずに吹いていた口笛は、奴のテーマ曲。
それに苦笑し、わずかに眼を細めた。
引き金を絞りながら小さく呟いた。
「アディオス」
年末の狂騒劇。
もう、子供たちに笑顔は生まれない。
PR