竜騎士5になるはずだったけど、かけなかったのでボツにしたもの
カインの副官視点でした。
「竜騎士との共同戦線は結構すきなんだけど、これがね」
そういって苦笑したのは歴代一の実力を持つと噂される当代の暗黒騎士団団長であるセシル=ハーヴィ。カイン隊長の親友だ。
その彼が“これが”と言ったのは移動に関することだ。
機動力があり空を制する竜騎士と、対地では向かうところ敵なしの暗黒騎士が行動を共にすれば、それこそ鬼に金棒なのだが移動には難がある。
聖なる竜は強い負の気を漂わせる暗黒騎士を背に乗せることを・・・否、近づくことさえも極度に嫌うからだ。
よって、移動の際には暗黒騎士の面々にはかなりの苦労を強いることになる。
つまり、竜の胴に縄をまわし、長くたらした縄の端にしがみついてもらっての移動になるのだ。
「・・・これ・・・嫌なんですよね・・・」
と、泣き言を言いながら竜から程よく離れた場所で、縄の先端に作られた輪に足を入れているのはセシル団長の副長を勤めているエンリという男だ。
明るい藁色の髪をしたこの男は、暗黒騎士団という協調性のない騎士たちの中にあってとても人当たりがいいという奇特な性格をしている。彼は俺と目が合うと、先ほどのいやな顔を一転にこりと人好きのする笑顔を見せた。
「すみません。ご苦労を掛けます」
急な夜間の呼び出しを詫びるため俺が頭を下げると、気にしなくていいというようにエンリは片手を上げた。
「報告もちょうど終わったところで暇をしていたところだったから平気ですよ」
だから気にするな・・・とでも言うのだろうが、それは、もう眠ると所だった・・・いうことではないだろうか?
イヤミで言ったつもりは欠片もないのだろうが・・・・。と微妙な気分を味わいながら頭を下げ、彼のもった縄を手繰るようにして自分の竜の下へと歩いた。
竜にまわした縄がしっかりしているかをもう一度確かめ、騎乗するとすでに竜の背にあった団長がふりかえり出立の声を上げた。
夜のバロンを横切り、郊外へ出る。
団長を先頭に俺がすぐの後ろ、その左右に